【第6回】電子カルテ情報共有サービスとは?「3文書6情報」「HL7 FHIR」を医療機関向けにやさしく解説
- Yuki

- 5月27日
- 読了時間: 6分

医療DXや診療報酬改定のニュースを見ていると、毎日のように出てくる専門用語があります。
「3文書6情報?」「HL7 FHIR(エッチエルセブン・ファイア)?」 「なんだか難しそうな英語や数字ばかりで、自院の経営にどう関係するのか分からない……」
そう感じている医院長や事務長の方も多いのではないでしょうか。 これらは、国が進める「全国医療情報プラットフォーム」の核となる「電子カルテ情報共有サービス」を理解するための最重要キーワードです。
今回は、専門用語をできるだけ使わずに、クリニックの現場実務にどう影響するのかをやさしく解説します。
電子カルテ情報共有サービスとは?「医療情報のパスポート」
一言でいうと、電子カルテ情報共有サービスとは次のような仕組みです。
「患者さんの同意のもと、日本中の病院・クリニック・薬局の間で、カルテの重要なデータをリアルタイムに共有・確認できる仕組み」
これまでは、他院での処方内容や検査結果を知るためには、患者さんのお薬手帳を見せてもらったり、紹介状(紙)を郵送・持参してもらったりするしかありませんでした。 このサービスが本格稼働すると、国が作った安全なネットワークを介して、自院のパソコン画面から直接、患者さんの過去の医療情報を確認できるようになります。
実務の基本:必ず押さえるべき「3文書6情報」
情報共有サービスで country-wide(全国的)に共有されるデータは、あらかじめ国によってルール化されています。それが「3文書6情報」です。
📄 3文書(書類のデータ)
診療情報提供書: いわゆる「紹介状」です。
退院時サマリー: 病院を退院した際に入院中の経過をまとめた書類です。
健康診断結果報告書: 各種健診の結果データです。
📊 6情報(患者さんの基本ステータス)
傷病名: どんな病気にかかっているか
アレルギー情報: 食べ物や環境などのアレルギー
薬剤禁忌情報: 出してはいけないお薬の情報
感染症情報: 注意すべき感染症の有無
検査情報: 血液検査や画像などの結果
処方情報: 今どんなお薬を飲んでいるか
これらがデータとしてつながることで、「初めて来院した患者さんだけど、他院でどんな薬をもらっているか、アレルギーはあるか」が、問診に頼らず正確に把握できるようになります。
なぜ重要?謎の暗号「HL7 FHIR」の意味
電子カルテの間でデータをやり取りするとき、メーカーごとにデータの書き方がバラバラだと、画面が文字化けしたり読み込めなかったりします。
そこで、国が「全員この書き方(共通言語)で統一してください」と指定した世界標準のルールが「HL7 FHIR(エッチエルセブン・ファイア)」です。
これまで: A社のカルテとB社のカルテは言葉が通じない
これから: すべてのカルテが「HL7 FHIR」という共通言語で話す
今後、クリニックが電子カルテを更新したり、新しく導入したりする場合は、この「HL7 FHIR対応(標準規格準拠)」が必須条件になります。
医院長・事務長が「今」から準備すべき実務対応
情報共有サービスの運用開始に向けて、クリニックのバックオフィスが準備しておくべきことは主に以下の3点です。
① 電子カルテベンダー(メーカー)への対応予定確認
現在お使いの電子カルテメーカーに、以下の質問をしてみてください。
「当院のカルテは、電子カルテ情報共有サービスへの接続に対応していますか?」
「HL7 FHIR(標準規格)への対応アップデートのスケジュールと費用はどれくらいですか?」
直前になって慌てないよう、ロードマップを握っておくことが大切です。
② 患者さんへの説明と「同意取得」の運用設計
医療情報は非常にデリケートな個人情報です。そのため、情報を共有するには「患者さんの同意」がベースになります。 マイナ保険証をカードリーダーにかざす際、患者さんの画面に「過去の情報を提供しますか?」という同意確認が出ます。受付スタッフがスムーズに案内できるよう、院内での声かけマニュアルや運用の流れを事務長を中心に設計しておきましょう。
③ 補助金・支援事業の「証憑(しょうひょう)管理」
この情報共有サービスを導入・改修するにあたっては、国からシステム改修費用の補助金が用意されています。 補助金を申請・受給するためには、見積書、契約書、発注書、領収書、そして「たしかに導入が完了した」ことを証明するシステム画面のキャプチャなどの証憑(しょうひょう)をセットで台帳管理しておく必要があります。数年後の監査に備え、今から「医療DX専用ファイル」を作って管理しましょう。
まとめ:情報共有は、診療の安全性を高める武器になる
電子カルテ情報共有サービスや「3文書6情報」の義務化・標準化の流れは、一見するとシステムの変更ばかりで面倒に思えるかもしれません。
しかし本質は、「患者さんの正確なデータを瞬時に把握することで、より安全で的確な診療ができるようになり、紹介状の書き起こしなどの事務負担を減らすための改革」です。
「システム会社に言われたからなんとなくアップデートする」のではなく、「地域医療とつながるためのインフラ整備」として、前向きにバックオフィスの仕組み化を進めていきましょう。
次回(第7回)は、医療DXを進める上での最大の守りである「サイバーセキュリティ対策とガイドラインのツボ」について解説します。
💡 医院長・事務長向けFAQ
Q. 患者さんが情報共有に「同意しない」と言った場合はどうなりますか? A. 同意が得られない場合は、従来通り患者さんへの問診やお薬手帳、紙の紹介状をベースに診療を行います。無理に同意を強要する必要はありませんが、情報が共有できると「より安全な医療が受けられる」というメリットを受付等でやさしく説明できるとスムーズです。
Q. このサービスを導入しないと、診療報酬(加算)に影響しますか? A. はい。今後の診療報酬改定において、電子カルテ情報共有サービスを活用していることや、3文書6情報のやり取りができる体制にあることが、「医療DX推進体制整備加算」などの上位加算の算定要件(必須条件)に組み込まれていく流れが確実視されています。
Q. 365メディカルでは、電子カルテの標準化についてどんなサポートをしてくれますか? A. 現在お使いのカルテが「HL7 FHIR」や情報共有サービスに対応できるかのベンダー交渉の代行、導入に関わる補助金申請の書類(証憑)整理の仕組み化、受付スタッフ向けのマイナ保険証・同意取得の運用マニュアル作成など、現場が混乱しないための実務をトータルでサポートします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際のシステム導入スケジュール、補助金交付要件、診療報酬の算定要件等にあたっては、必ず厚生労働省や関係機関、各システムメーカーの最新の公式発表をご確認ください。




コメント