top of page

医療専用ChatGPT・医療専用LLMは、医療DXの次の主戦場になる

  • 執筆者の写真: Yuki
    Yuki
  • 7月10日
  • 読了時間: 11分

365メディカルが考える、医療AI導入で医療機関が今から備えるべきこと


医療現場でAIの存在感が急速に高まっています。

これまで医療AIといえば、画像診断支援、検査データ解析、創薬、予測モデルなどが中心でした。しかし、生成AIの登場により、医療AIの役割は大きく変わり始めています。

特に注目されているのが、医療専用ChatGPTや医療専用LLMです。

LLMとは、大規模言語モデルのことです。大量の文章データを学習し、人間のように自然な文章を生成したり、質問に回答したり、要約、分類、検索、文章作成を行ったりするAIです。

一般向けのChatGPTだけでなく、医療領域に特化したAIモデルや、医療機関向けにセキュリティ・管理機能を強化した生成AIサービスも登場しています。

たとえば、Googleは医療質問への回答を目的としたMed-PaLMを研究し、その第2世代であるMed-PaLM 2は、医療分野向けに調整されたモデルとして紹介されています。また、OpenAIも医療・ヘルスケア向けの取り組みを進めており、医療機関向けにセキュリティや管理機能を備えた生成AIの利用環境が整いつつあります。

この流れは、医療機関にとって大きな意味を持ちます。

医療AIは、もはや「一部の大病院や研究機関だけが使う先端技術」ではありません。今後は、病院、クリニック、歯科医院、薬局、訪問看護、介護事業所でも、医療AIをどのように安全に活用するかが経営課題になります。

365メディカルでは、医療専用ChatGPTや医療専用LLMの普及は、医療DXの次の主戦場になると考えています。


医療専用LLMは何を変えるのか


医療専用LLMが注目される理由は、単に「AIが賢くなったから」ではありません。

医療現場には、文章に関する業務が非常に多く存在します。

診療録の作成。紹介状の下書き。退院サマリーの要約。患者説明文書の作成。院内マニュアルの検索。施設基準の確認。医療安全報告書の整理。カンファレンス資料の作成。委託先管理文書の確認。WEB掲示内容の更新。診療報酬改定資料の読み込み。

これらは、医師、看護師、事務長、医事課、情報システム担当者にとって大きな負担です。

医療専用LLMは、こうした文章・知識・判断補助の領域で活用が期待されています。

ただし、ここで重要なのは、医療AIは医師の代わりに診断するものではないということです。

WHOは、医療分野における大規模マルチモーダルモデルの倫理とガバナンスに関するガイダンスを公表し、医療、科学研究、公衆衛生、創薬などで幅広く使われる可能性がある一方、誤情報、バイアス、プライバシー、安全性などのリスクに注意が必要だとしています。

つまり、医療AIは「使えば便利」ではなく、「安全に使える運用設計があるか」が問われる段階に入っています。


医療AIには2つの種類がある


医療機関がAIを導入する際には、まずAIの用途を分けて考える必要があります。

1. 医療行為や診断支援に近いAI

画像診断支援、病変検出、診断候補提示、治療方針支援などです。

このようなAIは、使用目的やリスクによっては、医療機器プログラムとして薬機法上の規制対象になる可能性があります。

AI技術を用いた製品であっても、診断や治療に関わる目的で使用される場合には、単なる業務支援ツールとは異なる規制上の確認が必要になります。

2. 業務支援・情報整理・文書作成に使うAI

議事録作成、院内文書作成、施設基準チェック、WEB掲示文案作成、患者説明資料の下書き、マニュアル検索、FAQ対応などです。

これらは直ちに医療機器に該当するとは限りませんが、医療情報や個人情報を扱う場合には、情報セキュリティ、アクセス管理、ログ管理、委託先管理、職員教育が必要になります。

365メディカルの視点では、医療機関が最初に取り組みやすいのは、診断そのものではなく、業務支援型の医療AIです。

診断をAIに任せるのではなく、医療従事者や事務部門の負担を減らし、説明文書、施設基準管理、WEB掲示、証憑管理、医療安全、情報セキュリティ対応を効率化する。

この領域から始めることが、現実的で安全です。


医療AI導入で最も危険なのは「個人利用の延長」で使うこと


生成AIは便利です。だからこそ、現場では職員が個人アカウントでAIを使い始めるリスクがあります。

たとえば、次のような使い方です。

患者情報を入力してしまう。診療録の一部を貼り付けてしまう。検査結果をそのまま要約させてしまう。院内資料を外部AIに読み込ませてしまう。出力結果を確認せず患者説明に使ってしまう。

これは非常に危険です。

医療情報は、一般的な業務情報よりも慎重な管理が必要です。医療情報システムの安全管理では、アクセス管理、認証、ログ、委託先管理、バックアップ、非常時対応などが重要な要素になります。

医療機関がAIを使う場合も、「便利だから使う」ではなく、次の点を明確にする必要があります。

どの情報を入力してよいか。誰が使ってよいか。出力を誰が確認するか。利用記録を残すか。AIサービス事業者を委託先として評価しているか。患者情報や要配慮個人情報を入力しないルールがあるか。職員教育が行われているか。

医療AIは、個人利用の延長で使うものではありません。

医療機関の情報管理体制の中に、正式に組み込んで使うべきものです。


医療専用ChatGPTは、医療機関に何をもたらすか


医療専用ChatGPTや医療専用LLMが医療機関にもたらす価値は、大きく5つあります。

1. 医療文書作成の負担軽減

紹介状、退院サマリー、患者説明資料、院内掲示、WEB掲示、研修資料などの下書き作成を支援できます。

最終確認は医療従事者が行う必要がありますが、ゼロから文章を作成する負担を減らすことができます。

2. 施設基準・診療報酬改定資料の整理

診療報酬改定、施設基準、疑義解釈、通知、届出要件は複雑です。

AIを活用することで、資料の要約、チェックリスト化、院内説明資料の作成を効率化できる可能性があります。

3. WEB掲示・院内掲示の更新支援

医療機関には、施設基準、加算、医療DX体制、保険外負担、キャンセル料など、患者に公開すべき情報があります。

AIは、掲示内容の整理や分かりやすい表現への変換に活用できます。

4. 医療情報システム安全管理の文書化

責任分界、委託先管理、アカウント管理、ログ管理、バックアップ、BCPなどは、文書化と証憑管理が重要です。

AIは、運用規程やチェックリストの下書き作成を支援できます。

5. 職員教育・院内FAQへの活用

新人職員向けの教育資料、院内ルールのFAQ、医療DX体制の説明資料などにも活用できます。

属人的な知識を整理し、院内で共有しやすくすることは、人材不足時代の医療機関にとって重要です。


ただし、AIの回答を「正解」として扱ってはいけない


医療AIを導入する際に、最も重要なのは、AIの回答を正解として扱わないことです。

LLMは自然な文章を生成できますが、誤った内容をもっともらしく出力することがあります。いわゆるハルシネーションです。

医療領域では、誤った薬剤情報、禁忌の見落とし、古いガイドラインの参照、患者背景の誤認が重大なリスクにつながります。

つまり、医療専用LLMであっても、最終判断者は医師・医療機関です。

AIは、検索、要約、下書き、論点整理、チェック補助として使うべきです。

診断、治療方針、投薬、患者説明の最終判断をAIに委ねるべきではありません。

365メディカルでは、医療AIの導入において「人間の確認を前提とした運用設計」が不可欠だと考えています。


365メディカルが考える、医療AI導入の5つの実務


医療機関が医療AIを導入する場合、まず整えるべき実務は次の5つです。

1. 利用目的を明確にする

診断支援なのか、文書作成支援なのか、施設基準管理なのか、WEB掲示支援なのか、院内FAQなのかを明確にします。

目的が曖昧なまま導入すると、医療機器該当性、個人情報管理、責任分界が曖昧になります。

2. 入力してよい情報・いけない情報を決める

患者氏名、生年月日、カルテ情報、検査結果、画像、紹介状、同意書などを外部AIに入力してよいかを明確にします。

原則として、個人情報や要配慮情報は慎重に扱い、匿名化、仮名化、契約上の保護措置を検討する必要があります。

3. 出力結果の確認責任者を決める

AIが作成した文章や回答を、そのまま患者説明や院内文書に使うべきではありません。

医師、看護師、医事課、事務長など、誰が確認し、誰が承認するのかを決める必要があります。

4. ログ・証憑・委託先管理を整備する

誰が、いつ、どのAIを、何の目的で使ったのか。

委託先はどのような安全管理措置を講じているのか。

契約、利用規約、データ保存、監査ログ、アクセス権限を確認する必要があります。

5. 職員教育を行う

AIの便利さだけでなく、入力禁止情報、誤回答リスク、確認義務、患者説明時の注意点を教育する必要があります。

医療AIの安全な運用は、システム導入だけではなく、職員教育によって支えられます。


365メディカルの視点:医療AIは「導入」ではなく「統制」が重要


医療専用ChatGPTや医療専用LLMは、医療機関の業務を大きく変える可能性があります。

しかし、AIを導入するだけでは医療DXにはなりません。

重要なのは、AIを医療機関の業務プロセスに安全に組み込み、情報管理、施設基準管理、WEB掲示、証憑管理、委託先管理、BCPと一体で運用することです。

医療AIは、診療現場の負担軽減に役立つ可能性があります。事務部門の文書作成を効率化する可能性もあります。施設基準やWEB掲示の管理を支援する可能性もあります。

一方で、誤情報、個人情報漏えい、責任分界の曖昧さ、職員の個人利用、監査ログ不足、委託先管理不備といったリスクもあります。

だからこそ、医療AI導入の本質は「AIを使うこと」ではなく、「AIを安全に統制すること」です。

365メディカルは、医療機関の施設基準管理、WEB掲示、証憑管理、医療情報システム安全管理、医療DX支援を通じて、医療AI時代に必要な運用基盤づくりを支援していきます。

医療AIは、医療機関の未来を変える可能性を持っています。

しかし、その未来を安全に実現するには、技術だけでは足りません。

必要なのは、医療機関ごとのルール、責任分界、情報管理、証憑管理、そして人間による最終確認です。

医療専用ChatGPTや医療専用LLMを、現場の味方にできるか。

その答えは、AIそのものではなく、医療機関の運用設計にかかっています。


365メディカルについて


365メディカルでは、医療機関向けに、施設基準管理、WEB掲示、証憑管理、医療情報システム安全管理、医療DX体制整備の支援を行っています。

医療AI、生成AI、医療DX、サイバーセキュリティ、WEB掲示義務など、医療機関を取り巻く制度対応は年々複雑化しています。

「医療AIを安全に使うルールを整えたい」「施設基準や掲示情報を一元管理したい」「医療情報システム安全管理の対応を進めたい」「AI時代の証憑管理や委託先管理を整備したい」

このようなお悩みがあれば、365メディカルへご相談ください。


引用・参照

Google Research「Med-PaLM」https://sites.research.google/gr/med-palm/

Google Cloud Blog「Sharing Google’s Med-PaLM 2 medical large language model」https://cloud.google.com/blog/topics/healthcare-life-sciences/sharing-google-med-palm-2-medical-large-language-model

OpenAI Help Center「ChatGPT for Healthcare」https://help.openai.com/en/articles/20001046-chatgpt-for-healthcare

WHO「Ethics and governance of artificial intelligence for health」https://www.who.int/publications/i/item/9789240084759

厚生労働省「AI技術を利用した医療機器の医薬品医療機器法上の取扱にかかる対応について」https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000361102.pdf

総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419004/20240419004.html

Kasai et al.「Evaluating GPT-4 and ChatGPT on Japanese Medical Licensing Examinations」https://arxiv.org/abs/2303.18027


用語集

医療専用ChatGPT

医療機関、医療従事者、研究者、医療事務、患者支援などの利用を想定し、医療情報の検索、要約、文書作成、業務支援などに使われる生成AIサービスの総称です。

LLM

Large Language Modelの略で、大規模言語モデルを意味します。大量の文章データを学習し、自然言語で質問応答、要約、翻訳、文章作成、分類などを行うAIです。

医療専用LLM

医療文献、臨床ガイドライン、医療用語、医療質問応答などに対応するため、医療領域向けに調整・評価されたLLMです。ただし、医療専用であっても誤回答の可能性があり、医療判断には人間の確認が必要です。

生成AI

文章、画像、音声、動画、コードなどを生成するAIです。医療分野では、文書作成、要約、検索補助、患者説明資料作成、院内FAQなどへの活用が期待されています。

医療機器プログラム

医療機器としての目的性を持ち、意図したとおりに機能しない場合に患者や使用者の生命・健康に影響を与えるおそれがあるソフトウェアを指します。

薬機法

医薬品、医療機器、再生医療等製品などの品質・有効性・安全性を確保するための法律です。AIを用いた診断支援ソフトウェアなども、使用目的によっては薬機法上の医療機器に該当する場合があります。

ハルシネーション

AIが事実と異なる内容を、もっともらしく出力してしまう現象です。医療分野では、誤った薬剤情報、古いガイドライン、禁忌の見落としなどにつながる可能性があります。

医療情報システム安全管理

医療機関が電子カルテ、レセコン、クラウドサービス、ネットワーク、バックアップ、ログ、アカウント管理などを安全に運用するための管理体制です。

責任分界

医療機関、システムベンダー、クラウド事業者、AIサービス事業者などの間で、誰がどの範囲の責任を持つのかを明確にすることです。

証憑管理

届出書類、掲示内容、同意書、説明資料、研修記録、委託契約、ログなど、医療機関の運営体制を裏付ける資料を整理・保管することです。


免責事項

本記事は、医療AI、医療専用ChatGPT、医療専用LLM、医療DXに関する公表情報をもとに、一般社団法人365メディカルが医療機関向けに分かりやすく整理した情報提供を目的とするものです。

本記事の内容は、掲載時点で確認できる資料に基づいていますが、AI技術、医療AI規制、薬機法上の取扱い、医療情報システム安全管理、個人情報保護、診療報酬、各サービスの仕様は今後変更される可能性があります。

本記事は、個別の医療AIサービスの導入可否、薬機法該当性、医療機器承認、診療行為、診断、治療方針、法務、税務、情報セキュリティ、個別医療機関の経営判断について、専門的助言を行うものではありません。

実際に医療AIを導入・利用する場合は、必ず最新の公的資料、各サービスの契約条件・利用規約、個人情報保護法、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン、薬機法上の該当性を確認し、必要に応じて所管行政機関、専門家、弁護士、医療情報システム安全管理の専門家等へご相談ください。

AIの出力結果は、医師その他の医療従事者による確認を前提として取り扱い、診断・治療・投薬・患者説明の最終判断をAIのみに委ねないでください。

 
 
 

コメント


bottom of page