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口腔内スキャナが「保険診療の標準装備」になる日

  • 執筆者の写真: Yuki
    Yuki
  • 7月20日
  • 読了時間: 11分

令和8年度診療報酬改定で広がる光学印象とCAD/CAM冠の新時代


歯科医院における口腔内スキャナは、これまで自由診療、マウスピース矯正、インプラント、審美補綴などで活用する「先進的なデジタル機器」という印象が強い設備でした。

しかし、令和8年度診療報酬改定によって、その位置づけが変わり始めています。

今回の改定では、口腔内スキャナなどのデジタル印象採得装置を使用する「光学印象」の対象に、新たにCAD/CAM冠が加えられました。さらに、光学印象の評価は100点から150点へ引き上げられています。 

これは、単なる50点の引き上げではありません。

保険診療における日常的な補綴治療の中で、デジタル印象を活用する機会が広がったことを意味します。

令和8年度改定をきっかけに、歯科医院が考えるべきテーマは、「口腔内スキャナを導入するかどうか」から、保険診療の中で、どの症例に、どのような運用で活用するかへと変わりつつあります。

口腔内スキャナの導入を検討しているものの、購入後に使いこなせるか不安な歯科医院には、まず実際の診療で試せるレンタル導入が適しています。⁠365メディカルの口腔内スキャナレンタルサービス



令和8年度診療報酬改定で、光学印象はどう変わったのか

令和8年度改定前の光学印象は、CAD/CAMインレーを製作する場合に、デジタル印象採得装置を用いて印象採得と咬合採得を行ったときに算定する仕組みでした。

改定後は対象が拡大され、CAD/CAM冠またはCAD/CAMインレーを製作する場合に、デジタル印象採得装置を用いて印象採得と咬合採得を行ったとき、光学印象150点を算定する内容が示されています。 

光学印象の主な変更点

項目

改定前

令和8年度改定後

光学印象

100点

150点

主な対象

CAD/CAMインレー

CAD/CAM冠・CAD/CAMインレー

方法

デジタル印象採得装置による印象採得・咬合採得

同左

さらに、令和8年度改定では、CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの活用を進めるため、大臼歯に関する咬合支持要件なども見直されています。CAD/CAMインレーの評価も750点から770点へ変更されました。 

CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの装着時に算定される内面処理加算1についても、45点から55点へ引き上げられています。 

これらの変更を総合すると、国が歯科治療のデジタル化を、限定的な先進医療ではなく、保険診療の現場に広げようとしている方向性が見えてきます。

ただし、口腔内スキャナを所有しているだけで自動的に算定できるわけではありません。対象となる補綴物、施設基準、届出、使用方法、記録、技工所との連携など、実際の算定要件を確認したうえで運用する必要があります。


患者体験は「苦しい型取り」から変わる


従来の印象材を用いた型取りは、歯科治療に必要な重要な工程です。一方で、患者さんによっては次のような負担を感じることがあります。

  • 印象材による嘔吐反射

  • 硬化するまで口を開け続ける負担

  • 印象材の味やにおいに対する不快感

  • トレーによる圧迫感

  • 型取りへの恐怖や緊張

口腔内スキャナを活用した光学印象では、小型のスキャナで口腔内を読み取り、歯列や形成部位をデジタルデータとして取得します。

すべての患者、すべての症例で光学印象が適しているわけではありません。形成部位の位置、歯肉縁下の状態、出血や唾液、開口量、欠損範囲などによって、従来の印象採得が適しているケースもあります。

それでも、適応を適切に判断できれば、患者さんにとって光学印象は新しい選択肢になります。

また、取得したスキャン画像を診療室のモニターで見せながら、形成部位、咬合状態、治療予定の補綴物について説明できる点も大きな特徴です。

口腔内の状態を言葉だけで説明するのではなく、画像を共有しながら説明することで、患者さんが治療内容を理解しやすくなります。

これからの歯科医院では、「口腔内スキャナがあります」という設備の訴求だけでなく、患者さんの負担をどう軽減し、治療内容をどう分かりやすく伝えるかが重要になります。


口腔内スキャナは「算定機器」ではなく経営設備


令和8年度改定によって光学印象の評価は引き上げられました。

ただし、「150点を算定できるから購入する」という判断だけでは、十分な投資効果を得られない可能性があります。

口腔内スキャナの導入で検討すべきなのは、診療報酬だけではありません。

経営面で確認したい項目

  • 1か月に何症例で使用できるか

  • CAD/CAM冠・インレーの症例数

  • 再印象がどの程度発生しているか

  • 印象材や石膏などの材料費

  • 模型作製や梱包、発送にかかる時間

  • 石膏模型の保管スペース

  • 技工所との問い合わせ件数

  • スタッフがデータ送信に要する時間

  • 再製作が発生した場合の確認方法

  • 保守費用、ソフト利用料、更新費用

従来の印象採得では、印象採得、石膏注入、模型作製、梱包、発送、技工所での模型確認という複数の工程が発生します。

デジタル印象では、データ取得後に技工所へ送信できるため、院内と技工所の双方で業務フローを見直せる可能性があります。

一方で、スキャンに時間がかかったり、データ不備による再スキャンが多かったりすれば、かえってチェアタイムが長くなることもあります。

つまり、口腔内スキャナは、導入しただけで業務を効率化する魔法の機器ではありません。

形成、圧排、止血、スキャン、データ確認、技工指示、技工所への送信までを一つの業務として設計することで、初めて経営設備としての効果が生まれます。


導入の壁は「購入価格」より「使い続けられるか」


口腔内スキャナの導入でよくある課題は、購入したものの、使用する歯科医師やスタッフが限られ、次第に使われなくなることです。

例えば、次のような状態です。

  • 院長しかスキャンできない

  • スタッフによって操作方法が異なる

  • データ確認の基準が決まっていない

  • 再スキャンの判断が担当者任せになっている

  • 技工所ごとに送信方法が違う

  • 忙しい日は従来の印象に戻ってしまう

  • 保険請求上の記録方法が統一されていない

この状態では、高額な口腔内スキャナを購入しても、使用頻度が上がりません。

そこで重要になるのが、購入前の運用検証です。


導入前に確認すべきこと

  1. 自院で対象となる症例がどの程度あるか

  2. 日常の予約枠の中でスキャンできるか

  3. 歯科医師だけでなくスタッフも操作できるか

  4. 連携する技工所がデータを受け取れるか

  5. データ形式や送信方法に問題がないか

  6. 従来法と比較して業務負担がどう変わるか

  7. 購入後の保守費用を含めて採算が合うか

これらは、カタログやデモンストレーションだけでは判断できません。

実際の患者、実際の診療時間、実際のスタッフ体制で使ってみて、初めて見えてくる課題があります。


いきなり購入せず、レンタルで診療フローを検証する


口腔内スキャナは高額な設備です。

本体価格だけでなく、保守契約、ソフトウェア利用料、周辺機器、院内ネットワーク、スタッフ教育などを含めると、導入後にも継続的な費用が発生する場合があります。

そのため、初めから購入するのではなく、一定期間レンタルし、自院の診療フローに適合するかを確認する方法が現実的です。

365メディカルでは、口腔内スキャナを必要な期間利用できるレンタルサービスを提供しています。導入前の試用、繁忙期の一時的な増設、デジタル印象の院内研修など、歯科医院の状況に合わせた利用を想定しています。 

レンタル期間中には、単にスキャン回数を確認するだけでなく、次の項目を記録することが重要です。

  • 症例ごとのスキャン時間

  • 再スキャンの回数と原因

  • 従来法と比較したチェアタイム

  • 患者さんの反応

  • 技工所への送信時間

  • データ不備の発生状況

  • スタッフごとの習熟度

  • 月間の使用可能症例数

こうした記録をもとに判断すれば、「新しい機器だから購入する」のではなく、自院で継続的に活用できるかを確認してから投資することができます。

口腔内スキャナの購入前に、実際の保険診療で使用感や運用負担を確認してみませんか。⁠口腔内スキャナレンタルサービスの詳細・導入相談はこちら


技工所との連携まで整えなければ、デジタル化は完成しない


口腔内スキャナで取得したデータは、最終的に補綴物を製作する歯科技工所へ送られます。

ところが、スキャンデータだけをデジタル化しても、技工指示、色調情報、納期、質問、修正履歴、再製作の経緯が電話、紙、メール、LINEなどに分散していれば、業務全体は効率化されません。

例えば、次のような問題が起こります。

  • 最新の技工指示が分からない

  • 電話で伝えた変更内容が記録に残っていない

  • 写真と患者情報の対応関係が分からない

  • 誰がいつ納期を変更したか確認できない

  • 再製作の原因を振り返れない

  • 請求書や納品書が別々に保管されている

令和8年度改定では、歯科医師と歯科技工士が情報通信機器を用いて色調採得や口腔内確認などを行う連携についても評価が示され、連携体制や院内掲示に関する施設基準が設けられています。 

今後は、口腔内スキャナという「機器」だけでなく、歯科医院と歯科技工所の間で情報をどのように残し、共有し、確認できるようにするかが重要です。

365メディカルの「365-Connect」は、歯科医院と歯科技工所の発注、指示、進捗、書類、履歴をデジタルで管理するための運用基盤です。 

口腔内スキャナと技工連携をセットで整えることで、単なる印象採得のデジタル化から、診療・技工・事務を含む業務全体の見直しへと進められます。


令和8年度改定後、歯科医院が準備すべき5つのこと


口腔内スキャナの導入を検討する歯科医院は、次の順番で準備を進めるとよいでしょう。

1.対象症例数を確認する

過去数か月のCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの症例数を確認し、口腔内スキャナを使用できる可能性がある症例数を把握します。

2.施設基準と届出を確認する

光学印象は、機器を使用しただけで算定できるものではありません。最新の告示、通知、施設基準、届出様式、疑義解釈を確認する必要があります。令和8年度の地方厚生局の届出一覧にも、光学印象とCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの届出項目が掲載されています。 

3.院内手順を標準化する

患者説明、形成、圧排、止血、スキャン、確認、データ送信、診療録記載までの手順を決めます。

4.技工所と事前に協議する

対応可能なデータ形式、技工指示の送信方法、写真共有、納期、再製作時の対応を確認します。

5.購入前に実証する

一定期間レンタルし、使用症例数、スキャン時間、スタッフの習熟度、技工所との連携、費用対効果を確認します。


口腔内スキャナを「使える設備」にするために


令和8年度診療報酬改定は、光学印象を保険診療の中で活用しやすくする大きな転換点です。

しかし、改定された点数だけを見て、急いで機器を購入する必要はありません。

重要なのは、自院の患者層、症例数、スタッフ体制、技工所との関係、既存の診療フローを踏まえ、継続的に使える仕組みを整えることです。

口腔内スキャナは、置いてあるだけでは経営改善につながりません。

診療、患者説明、技工指示、情報共有、記録管理までを一体として設計したとき、初めて歯科医院のデジタル化を支える設備になります。

365メディカルでは、口腔内スキャナの購入を前提としないレンタル導入から、院内運用、技工所連携まで段階的にご相談いただけます。

「自院では何症例に使えるのか分からない」「購入しても使いこなせるか不安」「令和8年度改定に合わせて何から準備すべきか知りたい」「技工所とのデータ連携も含めて見直したい」

このような課題がある歯科医院は、まず現在の診療フローを整理するところから始めてみてください。


口腔内スキャナの導入・レンタルについて相談する

購入前の試用、導入方法、院内運用、技工所との連携など、歯科医院の状況に応じてご相談いただけます。


引用・参考資料

  1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」


    光学印象の対象拡充、CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの要件見直し、内面処理加算、歯科技工士連携等。 

  2. 地方厚生局「令和8年度診療報酬改定・特掲診療料の届出一覧」


    光学印象、CAD/CAM冠及びCAD/CAMインレー、歯科技工士連携加算等の届出項目。 

  3. 一般社団法人365メディカル「口腔内スキャナレンタルサービス」 

  4. 一般社団法人365メディカル「365-Connect」 


用語集

口腔内スキャナ小型のカメラ等を使用して口腔内の形状を読み取り、デジタルデータとして取得する装置です。診療報酬資料では、デジタル印象採得装置という表現も使用されています。

光学印象従来の印象材だけに頼らず、デジタル印象採得装置を使用して歯や口腔内の形状をデータとして取得する方法です。

CAD/CAM冠コンピュータによる設計と製造技術を用いて製作する歯冠補綴物です。使用できる歯や材料、算定要件は診療報酬制度で定められます。

CAD/CAMインレーコンピュータによる設計・製造技術を用いて製作するインレー修復物です。

歯科技工士連携歯科医師と歯科技工士が、補綴物の製作に必要な口腔内情報、色調、形態、技工指示等を共有して連携することです。

365-Connect歯科医院と歯科技工所の発注、技工指示、進捗、書類、履歴などをデジタルで管理する、365メディカルの技工連携支援サービスです。


免責事項

本記事は、令和8年度診療報酬改定に関する公開資料をもとに、歯科医院向けの一般的な情報提供を目的として作成しています。

個別症例における光学印象の適応、診療報酬の算定可否、施設基準、届出、診療録への記載、患者説明、歯科技工所との連携方法等については、最新の告示、通知、疑義解釈、地方厚生局および審査支払機関の取扱いを必ずご確認ください。

本記事は、診療報酬請求、法務、税務、医療広告または医療上の個別判断を代替するものではありません。

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