第3回ICT連携80点を“事故らず回す”方法:1案件1IDで写真・動画・STL・指示書を管理する(保存版テンプレ付き)
- Yuki

- 2月22日
- 読了時間: 6分

第2回でお伝えした通り、2026改定の歯科技工士連携加算は“仲良し加点”ではありません。
特に ICT連携(80点) の狙いは、距離や人材偏在があっても「連携が標準運用として回る状態」を制度側が増やすことです。(mhlw.go.jp)
ただし、ここで現場がつまずきます。
写真は送った。でもどこに行ったか分からない
チャットが散逸して「何を確認したか」が追えない
技工所から差し戻しが増える(欠損、マージン不明、対合不足)
カルテに何を書けばいいか毎回ブレる
結果、連携加算が“取れたり取れなかったり”になる
この事故の正体はシンプルです。
「連携の情報が、案件単位で束ねられていない」。
そこで第3回は、ICT連携を“仕組み”として回すための現実解、
1案件1ID(ケースID)運用を、テンプレまで含めて保存版としてまとめます。
1. なぜICT連携は崩壊しやすいのか(崩壊ポイントは3つ)
ICT連携が崩れる原因は、だいたいこの3つに収束します。
(1) 情報が散逸する
LINE、メール、電話、スタッフの個人スマホ、紙の指示書…
連携が増えるほど、情報は分散します。
分散すると「証拠が弱くなる」だけでなく、品質がブレます。
(2) “確認”の定義が曖昧
技工所側が「ここ確認したい」と思うポイントと、医院側が「これで十分でしょ」がズレる。
すると差し戻しが増え、往復が増え、結果的にICT連携が嫌われます。
(3) 責任の所在が曖昧
誰が撮る?誰が送る?誰が最終確認する?
役割が曖昧なままだと、案件が増えた瞬間に回りません。
解決策は一つ。
案件単位で、情報を束ねる(=1案件1ID)ことです。
2. 1案件1IDとは何か(“カルテ番号”ではなく“補綴案件番号”)
1案件1IDは、患者IDとは別に、補綴案件ごとに付与するIDです。
同じ患者でも、補綴が複数回あれば案件は複数
同じ日に複数歯を作っても、「同一補綴案件」として束ねる
技工所とのやり取り、写真、STL、指示書、確認ログを、そのIDで一本化する
要はこういうことです。
「この補綴の話は全部ここ」
を作るだけで、ICT連携は回り出します。
3. 【テンプレ】案件IDの付け方(現場で迷わない最小ルール)
おすすめは、誰が見ても一目でわかる形式。
案件ID(例)
TC-2026-000147
TC:医院(またはブランド)略称
2026:年
000147:通し番号(自動採番が理想)
“歯番”や“補綴種別”はIDに入れない(理由)
IDは長くなると運用で崩れます。
歯番や種別は「案件カード」に書けばOK。
IDは短く・固定・人間が扱えることが最優先。
4. 【テンプレ】1案件に必ず揃える「共有物の標準セット」
ICT連携は、共有する物を固定しないと事故ります。
そこで「標準セット」を決めます。最小はこれでOK。
共有セット(標準)
口腔内写真(必須)
正面
右側方/左側方
咬合面(上顎/下顎)
形成部位の近接(マージンが分かる)
色調情報(必要時)
できればスケール併記
“明度優先/透明感優先”など方針も一言
STLデータ(光学印象)
上顎/下顎/咬合(バイト)
技工指示書(テンプレ化)
補綴種別、材料、マージン、コンタクト、咬合、形態の優先順位
確認ログ(超重要)
誰が(歯科医師/技工士)
いつ
何を確認した(マージン/咬合/色調/軟組織/設計意図)
どう反映した(指示書追記・設計方針合意)
この「確認ログ」があると、連携加算の説明力が一気に上がります。(mhlw.go.jp)
5. 【テンプレ】案件カード(コピペで使える)
以下を“1案件=1枚”で作り、チャットや共有ドライブの冒頭に固定します。
(Googleドキュメントでも、スプレッドシートでもOK)
■案件カード(テンプレ)
案件ID: TC-2026-000147
患者: 〇〇(カルテNo.)
歯番: 右上6(例)
補綴: CAD/CAM冠(例)
納期希望: 〇/〇
目的: 審美優先/耐久優先/再治療回避(選択)
形成意図/注意点:
マージン:ショルダー/シャンファー(例)
形態:隣在歯に合わせる/長め短め(例)
咬合:
咬合採得条件:軽く閉じる/噛みしめ禁止(テンプレ)
早期接触の懸念:あり/なし
色調:
シェード:A2(例)
方針:明度優先/透明感優先(例)
添付(標準セット):
写真:正面/側方/咬合/近接
STL:上/下/バイト
指示書:添付済
確認ログ:
2026/02/22 技工士○○:マージン確認→近接写真追加依頼
2026/02/22 Dr○○:近接追加撮影→指示書に「コンタクト弱め」追記
2026/02/23 技工士○○:咬合条件確認→設計方針合意(コンタクト弱め)
これがあるだけで「散逸」はほぼ止まります。
案件カードが“この案件の真実”になります。
6. “確認”の定義を揃える:技工側確認プロトコル(差し戻し基準付き)
ICT連携が回るかどうかは、技工所が「何を確認するか」が決まっているかで決まります。
おすすめは、差し戻し基準を「3条件だけ」に絞ることです。
差し戻し(必須)3条件
マージン不明確(連続性が途切れている/歯肉で埋もれている)
連結部・辺縁の欠損(設計に必要な形が欠けている)
対合・咬合情報不足(対合欠損/バイト不安定)
この3つは、後工程で修正不能か、修正しても品質が落ちます。
だから“早期に差し戻す”のが正義。
逆に言うと、医院側はこの3条件を潰せば差し戻しが激減します。
7. カルテ記載テンプレ(ICT80点向け:最短で強い書き方)
第2回でも触れましたが、ICT連携は「記録で勝つ」世界です。
以下、コピペ用。
「歯科技工士と情報通信機器を用いて口腔内の確認等を行い(マージン・咬合・色調等)、当該補綴物の設計・製作に活用した。案件ID:TC-2026-000147。確認ログ・添付資料(写真/STL/指示書)を保存。」
“案件ID”を入れると、追跡可能性が上がります。
監査・点検で説明が簡単になります。
8. ありがちな失敗パターンと回避策(実戦)
最後に、導入時に必ず起きる“詰まり”を先回りで潰します。
失敗①:スタッフが忙しくて案件カードが更新されない
→ 回避:更新は「3行だけ」にする
確認ログは“箇条書き3行”でOK。完璧を目指すと止まります。
失敗②:写真が多すぎて、逆に見ない
→ 回避:必須写真は固定、追加は理由付き
「近接(マージン確認用)」のように用途を明示する。
失敗③:技工所ごとにルールが違って混乱
→ 回避:医院側の標準セットを固定し、技工所は上乗せ要求
医院側の“最低限”を固定すると、技工所が変わっても運用が崩れません。
まとめ:ICT連携80点は「チャットを頑張る」ではなく「案件で束ねる」
ICT連携が回らない理由は、スキャナやツールの性能ではありません。
情報が案件単位で束ねられていない。これに尽きます。
だから、勝ち筋は単純です。
1案件1IDを付ける
案件カードを作る
共有物の標準セットを固定する
確認ログを3行で残す
差し戻し基準を3条件で揃える
これができると、連携加算は“取れるかどうか”ではなく、
運用として当たり前に取れる状態になります。(mhlw.go.jp)
次回予告(第4回)
次回は「連携しているのに、なぜ作り直しが減らないのか?」を潰す回です。
テーマは KPI設計。
再印象率/再製率/調整回数/納期遅延率
原因分類(印象品質/咬合/情報不足/設計意図ズレ)
10分で回る月次レビューの型(チェック表)
政府が本当に欲しい成果=再現性を、数字で作る方法を解説します。
※本記事に記載している制度・法令に関する内容は、一般社団法人365メディカルが公開情報や資料をもとに整理した参考情報です。
当法人は法務・労務の専門家ではなく、本記事は特定の法的解釈や実務対応を保証するものではありません。
実際の対応や判断にあたっては、最新の法令・公式資料をご確認のうえ、社会保険労務士・弁護士などの専門家へご相談ください。
本記事は、「制度をどう理解すれば現場で考えやすくなるか」という観点からまとめたものであり、実務検討のヒントとしてご活用いただければ幸いです。




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