第4回政府が買いたいのは“再現性”だった:再印象・再製を減らすKPI設計と、10分で回る月次レビュー(テンプレ付き)
- Yuki

- 2月22日
- 読了時間: 6分

第1回〜第3回で、2026改定の“政府の趣き”をこう整理しました。
光学印象(口腔内スキャナ)は「スキャン行為」を評価しているのではなく、補綴工程の安定(再現性)を買いに来ている
歯科技工士連携加算は「連携した雰囲気」ではなく、口腔内確認→製作に活用→記録が残るという“運用”を評価している
ICT連携80点を事故らず回す現実解は、1案件1IDで情報を束ねること
ここまで整えても、現場でよく起きるのが次の状態です。
「連携もしてる。スキャンもしてる。
でも、作り直し(再印象・再製)が減らない…」
原因はシンプルで、成果を測る“ものさし(KPI)”が無いからです。
KPIが無いと、改善が「頑張る」「気をつける」に戻り、再び属人化します。
2026改定のメッセージを一言にするとこうです。
“運用で再現性を作れ。結果(やり直し削減)を出せ。” (mhlw.go.jp)
第4回は、その“再現性”を数字で作る回。
再印象・再製を減らすKPI設計と、10分で回る月次レビューの型を、テンプレ付きでまとめます。
1. まずゴールを固定:「連携の目的」は加算取得ではない
連携加算や光学印象の点数は“手段”です。
ゴールは、現場が一番痛いここ。
再印象を減らす(その場の撮り直し含む)
再製を減らす(作り直し)
調整時間を減らす(装着時の長時間調整)
納期の遅延を減らす(予約変更・患者不満につながる)
これが減ると、自然にこうなります。
チェアタイムが空く → 予約が回る → スタッフが疲弊しない → 品質が上がる → さらに回る。
政府が評価したい“工程安定”は、結局この状態のことです。(mhlw.go.jp)
2. KPIは「4つ」だけでいい(まずは最小から)
KPIは増やすほど運用が止まります。
まずは4つだけ。これで十分に改善が回ります。
KPI① 再印象率(再スキャン率)
定義:補綴案件のうち、再印象(再スキャン/再採得)が発生した割合
狙い:スキャン品質・圧排・乾燥の問題が見える
KPI② 再製率(作り直し率)
定義:完成物が再製になった割合(再製の理由も必ず記録)
狙い:連携不足、設計意図ズレ、マージン不良、咬合不一致など“本丸”が見える
KPI③ 装着時の調整時間(または調整回数)
定義:装着日に追加調整に要した時間(5分刻みでもOK)
狙い:咬合採得・対合情報・コンタクト設計の質が見える
KPI④ 納期遅延率(予約変更率)
定義:予定納期/装着日に間に合わなかった割合
狙い:差し戻し往復・確認不足・工程の詰まりが見える
この4つが下がれば、“再現性が上がった”と言えます。
3. “原因分類”がないKPIは、改善につながらない
KPIは数字だけでは意味がありません。
必ず「原因タグ」を付けます。これが改善の地図になります。
おすすめは、まず 4分類(細かくしない)です。
原因タグ(4分類)
A) 印象品質(欠損・マージン不明・乾燥不足・圧排不足)
B) 咬合(バイト不安定・対合不足・顎位ズレ)
C) 情報不足/連携不足(写真不足・色調不明・意図未共有)
D) 設計意図ズレ(コンタクト強弱・形態嗜好・優先順位違い)
これだけで「どこを直すべきか」が見えるようになります。
4. KPIの記録は“1案件1ID”でやる(第3回と接続)
第3回で紹介した 1案件1ID を、そのままKPIにも使います。
案件ID:TC-2026-000147
KPI記録:再印象(あり/なし)、再製(あり/なし)、調整(分)、納期遅延(あり/なし)
原因タグ:A〜D
補足:1行コメント(例:マージン近接写真不足)
これを案件カードの最後に追記するだけでOK。
「KPIのために別の作業を増やさない」のが継続のコツです。
5. 【テンプレ】10分で回る月次レビューの型(院内ミーティング用)
ここからが“回る化”です。
月末に10分だけやります。長くしない。説教しない。原因探しはする。
月次レビュー(10分)アジェンダ
先月の件数(補綴案件数)
KPI4つの数字(今月/先月比)
原因タグのトップ2(A〜Dのうち多いもの)
今月の“やること”を1つに絞る
次回までの担当を決める(担当者1名)
ポイント:改善は1つだけ。
3つやると、結局0になります。
6. 【テンプレ】月次レビュー記録(コピペで使える)
そのまま貼って使える形にします。
■月次レビュー(YYYY年MM月)
対象案件数: 〇件
KPI(今月/先月)
再印象率:〇% / 〇%
再製率:〇% / 〇%
調整時間(平均):〇分 / 〇分
納期遅延率:〇% / 〇%
原因タグ(件数)
A 印象品質:〇
B 咬合:〇
C 情報不足/連携不足:〇
D 設計意図ズレ:〇
今月の改善テーマ(1つだけ):
例)「マージン近接写真の基準を固定する」
改善アクション(最小):
ルール:近接写真は「1歯につき2枚(頬側・舌側)」を必須
チェック:送付前にスタッフが✅
期限:今月末
担当:〇〇
来月の評価方法:
再印象率Aタグが〇件以下になったら達成
これで十分です。これ以上はやりません。続けるために。
7. 改善テーマ別:打ち手の“最小セット”(よく出る2トップ)
実務では原因タグのトップが、だいたいAかBになります。
ここに最小の打ち手を置きます。
A(印象品質)が多いとき:最小打ち手3つ
乾燥基準を写真で統一(“OK例”を院内掲示)
マージン近接写真を必須化(2枚ルール)
差し戻し3条件を院内でも共有(マージン不明/欠損/対合不足)
B(咬合)が多いとき:最小打ち手3つ
咬合採得の声かけテンプレ(軽く閉じる、噛みしめ禁止)
バイト採得の再現性チェック(接触点が少ない症例は補助を入れる)
対合・咬合の欠損チェックを送付前に固定(第3回の3点確認)
8. KPIは“加算のため”ではなく、“経営のため”に効く
ここまでやると、現場で起きる変化はわりと早いです。
差し戻しの往復が減る
納期が読みやすくなる
装着日の調整が短くなる
スタッフが疲弊しにくくなる
患者満足が上がる(「早い・合う・きれい」)
つまりKPIは、制度対応を超えて 医院の生産性と評判に直結します。
2026改定が誘導しているのは、実はここです。(mhlw.go.jp)
まとめ:再現性は「数字」で作る
連携もスキャンも、“やってるつもり”のままだと改善は止まります。
だから、最小のKPI4つだけを回す。
再印象率
再製率
調整時間(回数)
納期遅延率
そして原因タグを4分類(A〜D)。
月1回、10分でレビュー。改善は1つだけ。
これで、補綴工程は目に見えて安定していきます。
次回予告(第5回:最終回)
最終回は、制度対応を“経営の武器”に変える回です。
連携加算を取れる医院の「外注戦略」
技工所の選び方(確認プロトコルで比較する)
患者説明に使える価値翻訳(なぜ当院は精度が高いか)
採用・教育に効く(標準化がある医院は育つ)
データ連携を資産化(症例DB/再製要因DB)
「連携の時代」を、医院の競争力に変える方法をまとめます。
※本記事に記載している制度・法令に関する内容は、一般社団法人365メディカルが公開情報や資料をもとに整理した参考情報です。
当法人は法務・労務の専門家ではなく、本記事は特定の法的解釈や実務対応を保証するものではありません。
実際の対応や判断にあたっては、最新の法令・公式資料をご確認のうえ、社会保険労務士・弁護士などの専門家へご相談ください。
本記事は、「制度をどう理解すれば現場で考えやすくなるか」という観点からまとめたものであり、実務検討のヒントとしてご活用いただければ幸いです。




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