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【令和8年歯科診療報酬改定】口腔内スキャナー連携ソフトで「歯科技工士連携加算2」は取得できる?各社クラウド連携と施設基準の落とし穴

執筆者の写真: Yuki
Yuki
6 時間前
読了時間: 8分

口腔内スキャナー(IOS)の普及に伴い、技工所とのデータ連携を日常的に行う歯科医院が増加しています。「すでにデジタルデータで補綴物の発注をしているから、令和8年度改定で設定された情報通信機器による連携加算(いわゆる加算2)もそのまま算定できるはず」とお考えの歯科医師・スタッフの方も多いのではないでしょうか。


確かに、主要なIOSメーカーはオンラインで症例やデータを送受信できるプラットフォームを用意しています。しかし結論から言うと、「連携ソフトでSTLデータを送信できること」と「診療報酬の算定要件を満たしていること」はイコールではありません。


この記事では、令和8年度の歯科診療報酬改定における「歯科技工士連携加算2」の考え方を整理し、各社システムの特徴や導入・運用時の注意点をわかりやすく解説します。


※本記事は公開情報に基づく一般的な解説です。個別の算定可否については、必ず地方厚生局や社会保険労務士などの専門家へご確認ください。



歯科技工士連携加算(情報通信機器の活用)の基礎知識


歯科医師と歯科技工士が密に協力し、質の高い補綴物等を製作する体制を評価するのが「歯科技工士連携加算」です。令和8年度の改定では、オンライン等を含む情報通信機器を活用したリアルタイムな連携を評価する区分(本稿では便宜的に「加算2」と表現)が注目を集めています。


この加算で重視されているのは、単に「ファイルを送信した」という事実ではありません。ICTを活用し、色調の選択(シェードテイク)や義歯・補綴物の適合確認などを、遠隔でありながら双方向かつリアルタイムに近い形でやり取りし、製作に反映させるプロセスそのものが評価対象となります。


さらに、制度の適用を受けるためにはソフトの有無だけでなく、以下のような医院側の体制整備(施設基準)が必須とされています。


・連携している歯科技工所(または院内歯科技工士)の名前や連携実績を院内に掲示し、原則としてウェブサイト等でも公表していること

・歯科技工士の働く環境改善や処遇向上に向けた取り組みを実施していること

・やり取りに使用するネットワークやシステムが「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の要求水準に達していること


このように、システム機能だけで完結するものではなく、運用面・環境面の条件を同時に満たす必要があります。



「データ送受信ができる」だけでは算定できない理由


主要メーカーのクラウドツールは、スキャンデータ(STL/PLY等)の暗号化送信や症例指示、チャットによるやり取りなど優れた機能を網羅しています。日常診療の効率化には欠かせないツールです。


しかし、加算2の要件をクリアするには、次のような運用実態が問われます。


1. 双方向での確認行為:ビデオ通話や高精細画像等を用い、色調や適合状態を実質的に共同確認できているか。

2. セキュリティ体制:3省2ガイドライン等に基づき、アクセス制御、本人確認、操作ログの記録、委託先との責任境界が正しく運用されているか。

3. 施設基準の整備:掲示物やHPでの公開、技工士の処遇改善といった要件が文書化されているか。


各メーカーがアピールする「安全なデータ通信」は、あくまでも通信ツールとしての安全性を示すものであり、診療報酬上の「加算要件を網羅している」と担保するものではありません。ツールは必要条件の一部に過ぎず、医院側の運用ルールや体制が伴って初めて算定の検討が可能となります。



主なIOSメーカー提供ソフトの連携機能比較


現在流通している主な口腔内スキャナーと、付属する連携システムの概要は以下の通りです。いずれも安全なデータ転送や指示書共有機能を備えていますが、診療報酬の算定にあたっては個別運用等の確認が必要です。


・3Shape(TRIOS Unite / Communicate)

症例データ送信、オーダーステータス管理、メッセージ機能を搭載。データ共有に強みを持つが、リアルタイムでの色調確認や映像通話、ガイドライン対応の運用設計は別途確認が必要。(判定:条件付き)


・Medit(Medit Link)

データ暗号化送信、Case Talkによる3Dモデル共有、チャット機能を装備。リアルタイム確認や施設基準との整合性については製品単体での担保資料が限られるため要確認。(判定:条件付き)


・Dentsply Sirona(Primescan / CEREC Connect Case Center)

高精度のデータ転送とデジタルワークフローに対応。映像を用いた遠隔確認を行う場合、安全性を担保した通信手段を別途準備する等の検討が必要。(判定:条件付き)


・iTero(MyiTero.com)

安全なクラウド環境でのファイル共有や確認作業に対応。双方向でのリアルタイムなコミュニケーション要件については運用方法の確認が求められる。(判定:条件付き)


・DEXIS(IS Connect / IS WebViewer)

各種3Dデータのクラウド送信とレビュー機能を完備。オンラインでの同時立ち会い運用やセキュリティ体制のチェックが必要。(判定:条件付き)


・Carestream Dental(CS Connect / Labs Exchange)

データ送信や発注管理を効率化。加算2が求める双方向の共同確認作業をどのようにカバーするか精査が必要。(判定:条件付き)


・Planmeca(Romexis Cloud / LabApp)

多種多様なデータの安全なやり取りに対応。リアルタイム連携を成立させるための通信環境設定などが課題となる。(判定:条件付き)


・SHINING 3D(Aoralscan Dental Cloud)

クラウドを介した迅速なデータ共有が可能。安全管理ガイドラインへの適合性やリアルタイム確認機能について販売元への確認が推奨される。(判定:条件付き)


※どのシステムにおいても、製品の導入のみで自動的に加算2が算定できるようになるわけではありません。実際の運用においてリアルタイムの確認やガイドライン遵守がなされているかを個別に見極める必要があります。



各社システムに共通する確認・検証ポイント


メーカーカタログ等からは読み取りにくい、運用上のチェック項目としては以下の要素が挙げられます。


・映像や音声を用いてどのように色調・適合確認を行うかの具体的手順

・多要素認証やID管理など、不正アクセスを防ぐ仕組みの導入状況

・使用するパソコンやタブレット端末の管理規定(盗難・紛失対策)

・過去のアクセス履歴や操作ログの保存期間および抽出可能性

・クラウドサービス提供事業者との間での情報安全管理に関する責任分界


これらについては、販売店や自院のIT担当者と連携し、書面等で確認を取ることが安全です。



算定スタートまでにチェックすべき手順


令和8年度改定に向けて、医院として準備すべき項目を整理しました。


【施設基準・掲示】

・連携先の技工所名(あるいは院内技工士)と連携実績を院内に掲示しているか

・自院ホームページ等への情報掲載準備ができているか

・技工士の負担軽減や処遇改善に向けた取組内容を文章化できるか


【システム・運用】

・活用するツールや通信ラインが医療安全管理ガイドラインに照らして適切か

・シェード確認や適合確認を行うための運用マニュアルを作成しているか

・端末管理、アクセス権限、ログ保存などのセキュリティ対策が講じられているか


【算定手続き】

・厚生局への届出要件を満たし、必要な確認を完了しているか

・単なる「ソフト購入日」ではなく「体制が完全に構築された日」を起算点としているか



誤解しやすい「歯科技工所ベースアップ支援料」との違い


「歯科技工士連携加算2」と混同されやすい制度として「歯科技工所ベースアップ支援料」(1装置につき15点)が存在します。


ベースアップ支援料は、指示書に基づく外注技工の実施や、届出の提出、支援料に相当する費用の委託料への反映などが主な算定要件となります。連携ソフトの導入が必須条件になっているわけではありません。


両者は目的も要件も異なるため、「ツールを入れたから両方取れる」と混同せず、それぞれの要件を独立して確認することが重要です。



まとめ


口腔内スキャナーと付属の連携ツールは、データ授受の効率化において非常に強力な武器となります。しかし、令和8年度改定の「歯科技工士連携加算2」を算定するためには、ソフトの機能だけでなく、双方向コミュニケーションの実態、医療安全管理ガイドラインへの適合、院内掲示や技工士の処遇改善といった多角的な要件を満たす必要があります。


「システムがあるから大丈夫」と判断せず、運用ルールや施設基準を一つひとつ精査していくことが、適切な診療報酬請求と安心な医院経営につながります。判断に迷う場合は、医療DXや診療報酬に詳しい専門家や行政窓口へ相談しながら進めることを推奨します。



情報連携・制度対応に関するご相談


365メディカルでは、医療情報システムの安全管理や施設基準の整理など、医療DXに関するご相談を承っています。自院の体制構築に不安がある方は、お気軽にお問い合わせください。



用語解説


・歯科技工士連携加算:歯科医師と技工士が協力して技工物を製作する体制を評価する診療報酬上の加算。

・歯科技工所ベースアップ支援料:技工士の待遇改善を目的とした評価区分。連携加算とは異なる制度。

・医療情報システムの安全管理に関するガイドライン:医療データを安全に取り扱うために厚生労働省が定めた規範。

・STL(Standard Triangle Language):3Dスキャンデータを扱う標準的なファイル形式。

・色調採得:補綴物の色を天然歯に合わせるために色調を確認・記録するプロセス。



参考・引用元


厚生労働省「施設基準等に関する通知」「令和8年度歯科診療報酬改定関連資料」

3Shape「Unite for Labs」

Medit「Medit Linkの使い方」

Dentsply Sirona「Connect Case Center」

iTero「MyiTero.com」

DEXIS「IS 口腔内スキャナー」

Planmeca「Romexis Cloud / Online Services」

SHINING 3D Dental「Dental Cloudソリューション」



免責事項


本記事は、令和8年度歯科診療報酬改定および各メーカーの公開情報をもとに一般的な留意点を整理したものであり、法令・制度の解釈や個別の算定可否を保証するものではありません。実際の算定にあたっては、必ず厚生労働省・地方厚生局が公表する一次資料をご確認いただくとともに、社会保険労務士等の専門家、および各メーカー・販売代理店にご確認ください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる結果についても責任を負いかねます。

 
 
 

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