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がんの薬は対象外」「湿布はセーフ」──2027年の薬代改革、結局何が変わるのか

  • 執筆者の写真: Yuki
    Yuki
  • 7月9日
  • 読了時間: 8分


はじめに:「薬代、また上がるの?」という不安


ドラッグストアに行けば買える薬なのに、病院で処方してもらうと保険が効いて安く済む。

そんな経験がある方は多いのではないでしょうか。

実はこの「市販薬でも買えるのに、保険で安く処方してもらえる薬」の仕組みが、2027年3月から大きく変わろうとしています。

厚生労働省は、市販薬(OTC医薬品)と効果が似ている「OTC類似薬」を使う患者に対して、薬代の一部を追加で負担してもらう新しい制度を検討しています。

目的は、現役世代が支払う健康保険料の負担を少しでも軽くすることです。

ただし、湿布薬や塗り薬など「日常的によく使われる薬」については、対象から外す方向で調整が進んでいるといいます。

「負担を軽くするための改革のはずが、対象を外していくうちに効果が薄まってしまうのでは」という指摘も出ています。

この記事では、何が変わろうとしているのか、誰にどんな影響があるのかを、できるだけかみくだいて整理します。


そもそも「OTC類似薬」って何?


聞き慣れない言葉かもしれませんが、難しいものではありません。

OTC類似薬とは、ドラッグストアなどで「市販薬(OTC医薬品)」として売られている薬と、効果や成分がよく似た「処方薬」のことです。

たとえば、保湿剤、抗アレルギー薬、解熱鎮痛剤などが代表例です。

これまでは病院で処方してもらえば、通常の自己負担割合(年齢に応じて1〜3割)で薬を受け取ることができました。

しかし今回の見直しでは、これらの薬について、通常の自己負担とは「別に」追加の負担を求める案が検討されています。

何がどう変わるのか

新制度が始まるのは2027年3月の予定です。

対象となるのは、保湿剤や抗アレルギー薬、解熱鎮痛剤など、およそ77成分・約1100品目にのぼるとされています。

制度の内容をシンプルに言うと、次のようになります。

  • これまで:年齢に応じた自己負担(1〜3割)を支払う

  • これから:従来の自己負担に加えて、薬剤費の4分の1を追加で負担する

つまり、同じ薬をもらっても、これまでより支払う金額が増える患者が出てくるということです。

厚生労働省の試算によると、この見直しによって、原則1割負担の75歳以上の方は自己負担が約3.3倍、原則3割負担の現役世代(70歳未満)は約1.6倍に増える可能性があるとされています。


「対象外」になるのはどんな人?


一方で、すべての患者が対象になるわけではありません。

厚労省は、以下のようなケースについては追加負担を求めない方向で案を示しています。

患者・ケース

内容

がん

がん治療に伴う症状への処方

難病

指定難病に付随する傷病への処方

慢性疾患

公費負担医療の助成対象

入院

入院中や退院時の処方

検査など

検査や手術に絡む処方

長期使用(飲み薬)

年間50週以上の処方

長期使用(湿布など)

慢性・再発性の病気で日常的に使用

たとえば、がん患者については「がんの治療や副作用のために処方される薬」に限って対象から外すとされています。

がんとは直接関係のない症状や、治療後の定期的な診察・検査で処方される薬については、対象になる可能性があるという整理です。

また、湿布薬や塗り薬についても、慢性的な疾患や再発のおそれがある病気で、医師が日常的な使用を指示している場合は対象外とする方向です。


なぜ「骨抜き」と言われているのか


ここで気になるのが、「例外がこんなに多くて、本当に負担軽減につながるの?」という点です。

実際、国内で新制度の候補となる成分を含む湿布薬は、年間およそ21億枚処方されており、薬価の総額は350億円ほどにのぼるとされています。

さらに、湿布や貼り薬は2020年度時点で、およそ3割が「1回に処方できる上限量」で処方されていたというデータもあります。

これは、いわゆる「通年処方(年間を通じて同じ薬を処方し続けること)」に該当する可能性がある量です。

つまり、負担軽減の対象になりそうな「よく使われる薬」ほど、例外扱いになりやすい構造になっているのです。

このため、「対象を丁寧に絞り込んだ結果、期待していたほどの負担軽減効果が出ないのではないか」という懸念が出ています。


薬の分類をめぐる、地味だけど大事な論点


もうひとつ、あまり目立ちませんが重要な論点があります。

厚労省は、市販薬と処方薬の関係を、次の3つのパターンに整理しています。

  1. 病名が対応しているもの

  2. 病名と症状などが対応しているもの

  3. 効能・効果が一致していないもの

このうち(3)、つまり市販薬と処方薬で「効能・効果にズレがあるもの」については、追加負担を求めない方向とされています。

たとえば、たん切り薬として知られる「カルボシステイン」。

市販薬としての効能・効果は「たん」ですが、OTC類似薬として気管支炎などに処方される場合は、たんの排出を目的として使われるため、新制度の対象になり得ます。

一方で、慢性副鼻腔炎(いわゆる「蓄膿症」)の治療で処方される場合は、鼻の中の「うみ」を出すために使われることもあり、どちらに分類すべきか議論を呼びそうです。

こうした細かい線引きひとつで、対象になるかどうかが変わってくるというのが、この制度の難しいところです。


今後のスケジュールと注目ポイント


厚生労働省は6月25日、薬や患者の具体的な範囲を議論する有識者検討会を立ち上げました。

制度の背景には、2025年に改正された健康保険法があり、患者の所得や病状、治療内容への配慮を明記しているとされています。

今後は8月をめどに議論を整理していく方針です。

上野賢一郎厚労相は4月の会見で、「がん、難病等の慢性疾患、入院中、対象医薬品の長期使用等、医療上必要と医師が認める患者は対象外になる」との認識を示していました。

今後の議論では、

  • 対象となる患者・ケースの線引き

  • 「通年処方」の扱い

  • 分類が難しい薬の取り扱い

といった点が、引き続き焦点になりそうです。


私たちの生活にどう関わってくるのか


国民医療費(保険診療の対象となる診療費や薬剤費などの総額)は、2023年度で48兆円を上回っています。

今回の見直しによって、厚労省は医療費をおよそ年900億円減らせると試算していますが、子どもや指定難病などの公費負担医療、入院患者などを除いて算定されたものです。

がん患者や通年処方の患者を対象外にすればするほど、負担軽減の効果は小さくなっていく可能性があります。

現役世代の保険料負担を軽くするための改革が、結果としてどこまで効果を発揮するのかは、まだ見通せない状況です。

一方で、患者側からすれば「自分がもらっている薬は対象になるのか、ならないのか」は、今後の生活設計にも関わる重要な情報です。

医療機関の窓口や薬局でも、制度が固まった段階で、患者への説明や案内の重要性がこれまで以上に高まっていくと考えられます。

こうした制度変更のたびに、患者に分かりやすく情報を伝える体制づくりは、医療機関にとっても地味ながら大切な課題です。

施設基準の掲示や患者向けの案内整備など、日々の情報発信を見直すきっかけとして捉えてみるのも一つの方法かもしれません。


まとめ


  • 2027年3月から、OTC類似薬を使う患者に追加負担(薬剤費の4分の1)を求める新制度が検討されている

  • がん治療、指定難病、入院中、長期使用が必要なケースなどは対象外とする案が示されている

  • 湿布薬や塗り薬は、日常的に使われる薬として対象外になりやすい

  • 例外が多いため、想定していた負担軽減効果が薄まる可能性が指摘されている

  • 今後は8月をめどに議論が整理され、詳細が固まっていく見通し

制度の詳細は今後も変わる可能性があります。

ご自身やご家族が服用している薬が対象になりそうか気になる方は、今後の報道や厚生労働省の発表を継続してチェックしておくことをおすすめします。

また、医療機関で働く方は、制度変更に伴う患者への説明対応や掲示物の整備について、早めに情報収集を始めておくと安心です。


引用・参照

  • 本記事は、2026年7月9日付の会員限定ニュース記事(保険料改革をテーマとした報道)の内容を基に構成しています。

  • 記事内のデータ・案の内容は、厚生労働省の資料および有識者検討会での議論をもとにしたものです。

  • 制度の詳細は今後の検討会での議論により変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省の公式発表をご確認ください。

用語集

  • OTC類似薬:ドラッグストアなどで市販されている薬(OTC医薬品)と、効果や成分が似ている処方薬のこと。

  • 自己負担割合:医療費のうち、患者本人が窓口で支払う割合。年齢や所得に応じて1〜3割となる。

  • 指定難病:国が医療費助成の対象として指定している難病。

  • 公費負担医療:国や自治体が医療費の一部または全部を負担する制度。

  • 通年処方:年間を通じて同じ薬が継続的に処方されること。

  • 国民医療費:保険診療の対象となる診療費や薬剤費などの総額を示す指標。

免責事項

本記事は、公表されている報道内容をもとに、制度の概要をわかりやすく整理したものです。制度の詳細・対象範囲・実施時期などは今後の議論により変更される可能性があります。個別の医療・制度に関するご判断は、必ず厚生労働省の公式発表や医療機関・専門家へのご確認をお願いいたします。


 
 
 

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