【診療報酬改定2026】「3.09%引き上げ」でもクリニックの6割超が減益?プラス改定のからくりと今必要な経営対策


2026年度の診療報酬改定において、本体改定率が「+3.09%」と30年ぶりの高水準で引き上げられました。しかし、報道の華々しさとは裏腹に、医療現場からは「経営が一向に楽にならない」という悲鳴が上がっています。
全国保険医団体連合会(保団連)が2026年10月に公表したアンケート速報値によると、医療機関全体の63%、診療所に限っては68%が「減益」と回答しました。さらに、物価高騰への対応について「不十分」と答えた医療機関は87%に上っています。なぜ、プラス改定にもかかわらず手元に利益が残らないのでしょうか。本記事では改定率の内訳を読み解き、 clinics が今打つべき具体的な手立てを整理します。
■ なぜ「+3.09%」でも利益が増えないのか?内訳からわかる3つの理由
「本体改定率+3.09%」という数値は、そのままクリニックの純利益が3%増えることを意味していません。その内訳を細かく分解すると、増収分のほとんどが特定の用途に消えてしまう構造が見えてきます。
理由1:大半が「スタッフの賃上げ財源」に消える
+3.09%のうち、実に1.70%分(過半数)はベースアップ評価料などを通じた「人件費(賃上げ)」に充てるための枠組みです。収益が入ってきても、それと同額の人件費が支出として出ていくため、手元に残る利益は増えません。
理由2:2年間の平均値というマジック
「3.09%」という数値は、2026年度(+2.41%)と2027年度(+3.77%)の2年間の平均値です。つまり、2026年度単体で見れば実際の引き上げ幅は3.09%を下回っており、即座に大きな恩恵を受けられるわけではありません。
理由3:薬価引き下げと物価高のダブルパンチ
本体はプラスであるものの、薬価改定は-0.86%となり、全体(ネット)の改定率は+2.22%にとどまります。一方で、光熱費・医療資材・各種委託費などはそれ以上のスピードで高騰しています。公定価格で診療報酬が固定されている医療機関は、自院の判断で価格転嫁(値上げ)ができないため、上昇したコストを自力で吸収せざるを得ず、収支を圧迫しています。
■ 2024年改定からの赤字累積と、増加する診療所の倒産リスク
財務省などは「診療所の経営は安定している」との見方を示し、改定財源の多くを病院へ配分しました。しかし現場では、2024年度の改定時点で約4割の診療所がすでに赤字経営に陥っていたと指摘されています。その状態のまま物価高と人件費増が押し寄せた結果、今回の速報値で見られる6割超の減益という事態につながっています。
こうした経営圧迫は、倒産件数の増加という形でも顕在化しています。帝国データバンクの調査では、2026年上半期の医療機関の倒産が過去最多の39件に達し、なかでも診療所が19件と突出すべき多さとなりました。
ここで注意したいのは、倒産要因の約4割が「経営者(院長)の病気や逝去」による事業断念である点です。院長一人が診療と経営の双方を抱え込んでいる小規模クリニックでは、院長の体調不良がそのまま閉院・倒産に直結するリスクを抱えています。
■ 「期中改定」を求める声と、今後のスケジュール
通常、診療報酬は2年に1度見直されますが、保団連は現状の危機的状況を受けて、2年を待たずに見直す「期中改定」を政府・厚労省に要請しています。
今後は、2026年11月〜12月頃に公表予定の厚労省経営状況調査の結果や、2027年6月に予定されている追加引き上げ(+3.77%に向けた調整)の妥当性検証など、国の動向から目が離せません。
■ 制度改定を待たずにクリニックが「今」取り組むべき4つのアクション
制度の議論や国の補正を待っているだけでは、経営の悪化を防ぐことはできません。自院の経営を守るために、今すぐ実行できる対策を進めましょう。
1. ベースアップ評価料の確実な取得と管理
賃上げ財源であるベースアップ評価料を未届出の場合は速やかに対応し、すでに取得している場合は返還リスクを避けるために届出内容と実績報告を正しく運用しましょう。
2. 月次収支の「見える化」で原因特定
改定前後の収支データを月単位で比較し、減益の原因が「患者数の減少(収入減)」なのか「材料費・光熱費の高騰」なのか、あるいは「人件費の急増」なのかを明確にします。
3. 施設基準と加算の算定漏れをチェック
新設・改定された各種加算の算定要件を満たせているか、WEBでの施設基準掲示など必要な対応が漏れていないかを点検・整備します。
4. 院長への依存度を下げる体制づくり(DXとBCP)
医療DXの推進やバックオフィス業務の外注化を進め、院長の事務負担を軽減しましょう。あわせて万一の事態に備えた事業継続計画(BCP)の策定や事業承継の準備を進めることが、中長期的な経営リスクの回避につながります。
■ まとめ:ニュースの「改定率」ではなく自院の「数字」を見直そう
「本体+3.09%」という表面的な数字にとらわれず、自院の月次データを冷静に分析することが重要です。公定価格という制約があるからこそ、加算の取得漏れ防止や業務効率化、院長不在時にも耐えられる体制づくりが不可欠となります。
365メディカルでは、診療報酬改定への対応をはじめ、ベースアップ評価料の申請・管理、加算算定の点検、医療DXによる事務コスト削減まで、クリニック経営を総合的にサポートしています。「収支が悪化した原因を整理したい」「加算の取りこぼしがないか確認したい」という場合は、ぜひお気軽にご相談ください。




コメント