診療報酬改定2026:知らないと損をする「賃上げ・物価高騰対策」5つの重要ポイント
- Yuki

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1. はじめに:医療機関を襲う「物価・賃金高騰」の波と、公定価格の壁
現在、日本の医療機関は未曾有の構造的危機に直面しています。原材料費や光熱費、そして深刻な人手不足に伴う人件費の急騰。一般企業であればコスト上昇分を価格に転嫁できますが、医療機関には「公定価格(診療報酬)」という強固な壁が立ちはだかります。自らの経営努力だけでは、コスト増を収入で補填できない仕組みになっているのです。
2026年度(令和8年度)診療報酬改定は、この「価格転嫁できない構造」への緊急対応策です。今回の目玉は「基本診療料の大幅引き上げ」「物価対応料の新設」「ベースアップ評価料の拡充」の3本柱。これらは単なる点数の加算ではなく、医療従事者の処遇改善を制度として固定し、経営の破綻を防ぐための極めて重要なパーツとなります。
2. 【衝撃】現に算定していても「再届出」が必要?6月1日のデッドライン
今回の改定で経営層・事務責任者が最も警戒すべきは、事務手続きのデッドラインです。現在、すでに「ベースアップ評価料」を算定している医療機関であっても、2026年6月以降も継続して算定するためには、改めて施設基準の届出を完了させなければなりません。
厚生労働省の資料には、以下のように明確に記されています。
「これまでにベースアップ評価料を届け出ていても、令和8年6月以降も算定を続けるには、改めて、令和8年5月中に届出が必要です」
この届出の最終期限は**「令和8年6月1日(月)必着」**です。もしこの届出を失念すれば、6月からの算定はストップします。一度引き上げた職員の賃金を引き下げることは現実的に不可能であり、届出漏れは「賃上げ原資が消失し、自腹での賃上げを余儀なくされる」という最悪の経営リスクを招きます。5月18日までの早期届出が推奨されていることを忘れてはなりません。
3. 2段階で跳ね上がる「物価対応料」:2027年度には点数が2倍に
2026年度改定では、物価高騰への段階的な適応を支援する「物価対応料」が新設されます。この項目の戦略的なポイントは、2026年度(令和8年度)と2027年度(令和9年度)で点数が2段階設定されており、2年目には点数が一気に「2倍」へ跳ね上がる設計になっている点です。
外来・在宅物価対応料(初診時):R8年度 2点 → R9年度 4点
入院物価対応料(急性期一般1):R8年度 58点 → R9年度 116点
なぜこのような変則的な設計なのでしょうか。これは2028年度(令和10年度)の次々回改定への橋渡しであり、医療機関に対して「物価上昇に合わせた段階的な賃金・待遇の引き上げ」を促すメカニズムです。経営側は、R9年度(2027年)の期中に大幅な増収とそれに伴う支出増が発生することを予見し、今から中長期的な予算計画を立てる必要があります。
4. 「実績」が明暗を分ける:継続的な賃上げ施設への優遇措置
今回の改定には「過去の努力を評価する」という、従来の診療報酬には珍しいメッセージが込められています。具体的には、2024〜25年度に継続して賃上げを行ってきた「継続施設」と、今回から取り組む「新規施設」とで、ベースアップ評価料の点数に明確な格差が設けられました。
【外来・在宅ベースアップ評価料(I)初診時の比較】
継続施設(注5算定):
2026年度(R8.6〜):23点
2027年度(R9.6〜):40点
新規施設:
2026年度(R8.6〜):17点
2027年度(R9.6〜):34点
この「6点の差」は、過去の先行投資に対するリワード(報酬)です。既存の算定実績が2年目(R9年度)まで有利に働くため、継続的な賃上げは経営上の「優位性」へと繋がります。
5. 要注意の「入院料減算」:賃上げ実績を示せない病院へのペナルティ
今回の制度は、単なる「手当」ではなく、確実な実行を迫る「義務」の側面を併せ持っています。2024年度から2026年度にかけての賃上げ実績(計5.5%以上、事務職員は8%相当)を証明できない病院に対しては、入院基本料等から特定の点数が直接差し引かれる「減算規定」が適用されます。
施設タイプ | 1日あたりの減算幅 |
特定機能病院(一般7対1) | 141点 の減算 |
急性期一般1 / 急性期病院A | 121点 の減算 |
地域包括医療病棟 | 113点 の減算 |
地域包括ケア病棟 / 地域一般 | 69点 〜 65点 の減算 |
ここで注目すべきは、この減算が**「1日につき」**課されるという点です。例えば141点の減算は、患者1人あたり1日1,410円のマイナス。100床の病床が稼働していれば、月間で約400万円もの収益消失に繋がります。実績を示せないことによる経営損失はあまりに甚大であり、もはや賃上げは「努力目標」ではなく「経営上の必達事項」です。
6. 複雑を極める「様式迷路」:自院のタイプ別必要書類を把握せよ
届出に必要な様式は、自院の区分とこれまでの実績によって複雑に分岐します。ソースのフロー図に基づき、典型的なケースを整理しました。
無床診療所の場合
【既存算定あり + 賃上げ実績あり】 \rightarrow 様式95 + 様式98 を提出。
【既存算定あり + 賃上げ原資が不足し(II)を算定】 \rightarrow 様式95 + 様式96 を提出。
病院の場合
【既存算定あり + 入院ベア評価料を選択(大半) + 賃上げ実績あり】 \rightarrow 様式95 + 様式97 + 様式98。
【賃上げ実績(5.5%)を示せない場合】 \rightarrow 様式95 + 様式97(ただし入院料は減算対象となる)。
※ 様式98は、過去の賃上げ実績(5.5%/8%相当)を証明し、高い点数(注5)を勝ち取るための必須書類です。また、様式97は入院ベースアップ評価料の計算に必要となります。
7. おわりに:2026年6月からの「新基準」に向けて今すべきこと
2026年度の診療報酬改定は、医療従事者の処遇改善を制度レベルで固定化し、医療機関の存立を守るための歴史的な転換点です。しかし、どれほど点数が拡充されても、期限内の届出と適正な実績報告ができなければ、その恩恵を受けることはできません。
医療機関が守るべき年間スケジュール:
5月中:施設基準の再届出(6月1日必着)。
8月中:前年度の「賃金改善実績報告書」および、当年度の「中間報告書」を提出。
「届出を出して終わり」ではありません。毎年8月の報告サイクルを含めたコンプライアンスの遵守が求められます。
最後に、経営者・事務長の皆様へ問いかけます。 「自院の賃上げ実績を様式98で証明する準備は整っていますか? そして、来年5月のスケジュールを今すぐカレンダーに書き込みましたか?」 準備の遅れは、取り返しのつかない経営損失に直結します。今すぐ着手してください。




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